フィジカルの課題 ~あなたに足りないものはなに?~

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目次

はじめに

フィジカルトレーニングがうまくいかない最大の理由は、トレーニングの内容そのものではありません。多くの場合、「自分に何が足りないのか分からないまま鍛えている」ことが問題になります。つまり、目的が曖昧なまま身体に刺激を与えている状態です。

野球選手の現場では、「とりあえず身体を強くしたい」「みんながやっているから同じことをやる」といった理由でトレーニングが選ばれることが少なくありません。しかし、フィジカルは漠然と鍛えても、競技力向上には直結しません。足りていない要素と、すでに足りている要素を区別せずに鍛えると、成長が遅れるだけでなく、ケガやパフォーマンス低下につながることもあります。

この章の目的は非常にシンプルです。
「今の自分に、何が足りていて、何が足りていないのか」
を整理できるようになること。これが明確になるだけで、フィジカルトレーニングの意味は大きく変わります。

フィジカルには複数の要素があり、すべての選手が同じ課題を抱えているわけではありません。力そのものが不足している選手もいれば、力はあるのにうまく使えていない選手もいます。また、土台が整っていない段階で高い出力を求めてしまい、結果として動作が不安定になっているケースもあります。

重要なのは、「たくさんやること」ではなく、「正しい順番で補うこと」です。そのためには、まず現状を把握する必要があります。自分の身体がどの段階にあり、どの能力が不足しているのかを理解しなければ、トレーニングは場当たり的な作業になってしまいます。

この章では、BTAの考え方をもとに、フィジカルの課題を整理するための視点を提示します。タイプ分け、成長段階による優先順位、フィジカルを構成する要素の分解などを通して、自分の課題を客観的に捉えられるようになることを目指します。ここが整理できれば、次章以降のトレーニング内容が、単なるメニューではなく「意味のある選択」に変わっていきます。

全員に同じトレーニングは必要ない

まず大前提として、全員に同じフィジカルトレーニングを行う必要はありません。これは能力差の問題ではなく、「身体の状態が一人ひとり違う」という極めて当たり前の事実に基づいた考え方です。しかし現場では、効率や管理のしやすさを優先するあまり、全員が同じメニュー、同じ重さ、同じ回数でトレーニングを行うケースが多く見られます。

一見すると、同じことをやるのは平等に思えるかもしれません。しかしフィジカルの観点で見ると、これはかなり不公平な状況です。なぜなら、すでに十分な土台を持っている選手と、まだ基礎が整っていない選手が、同じ刺激を受けてしまうからです。結果として、ある選手にとっては刺激が弱すぎ、別の選手にとっては過剰な負荷になります。

たとえば、すでにストレングスがある選手にとっては、軽すぎる負荷のトレーニングは成長につながりません。一方で、身体を支える力が不足している選手にとっては、同じ負荷がフォームの崩れや代償動作を生み、ケガのリスクを高める原因になります。このように、同じメニューであっても、身体への影響は選手ごとに大きく異なります。

フィジカルトレーニングは、「どれだけ頑張ったか」よりも、「その刺激が今の身体に適切かどうか」が重要です。適切な刺激とは、身体がコントロールできる範囲で、かつ少しずつ能力を引き上げられる負荷のことを指します。これを無視して一律のトレーニングを続けると、成長のスピードに大きな差が生まれます。

また、全員同じトレーニングを行う環境では、自分の課題に目を向ける意識が育ちにくくなります。「みんなと同じことをやっているから大丈夫」という考え方は、主体的に身体を理解する姿勢を弱めてしまいます。本来トレーニングは、自分の身体と向き合い、何が足りないのかを考えながら行うものです。

BTAでは、フィジカルを「個別に最適化すべきもの」として捉えています。年齢、経験、身体の特徴、プレースタイルによって、必要な刺激や優先順位は変わります。全員が同じことをやるのではなく、それぞれが「今やるべきこと」を理解したうえでトレーニングに取り組むことが、遠回りをしない成長につながります。

この考え方を持つことが、第2章全体の土台になります。ここから先は、「自分はどのタイプなのか」「今の段階で何を優先すべきか」を整理していきます。全員に同じトレーニングが必要ないからこそ、自分の課題を正しく知ることが重要になるのです。

フィジカルの課題は「3つのタイプ」に分けられる

フィジカルの課題を考えるときに重要なのは、「強い・弱い」という曖昧な基準で判断しないことです。BTAでは、野球選手のフィジカル課題を感覚や印象で捉えるのではなく、「どの能力が不足しているか」という観点から整理します。そのために用いているのが、3つのタイプ分けです。

このタイプ分けは、選手を固定的に分類するためのものではありません。あくまで「今の段階で、どこに課題があるか」を把握するための指標です。成長やトレーニングによって、タイプは変化していきます。まずは、自分がどの状態に近いのかを冷静に見ていくことが大切です。

タイプ① ストレングス不足タイプ

このタイプの特徴は、身体そのものがまだ負荷に耐えられていない点にあります。体格が細い、当たり負けしやすい、動作中に姿勢が崩れやすいといった傾向が見られます。フォームを意識しても安定せず、出力が毎回ばらつく選手は、このタイプに該当することが多くあります。

起きやすい問題としては、球速や打球速度が伸びないこと、強いフォームを再現できないことが挙げられます。これは技術の理解が不足しているからではなく、力を出す以前に、その力を受け止める身体ができていないことが原因です。

ストレングス不足タイプの選手は、「もっと速く」「もっと強く」と出力を求めがちですが、その前に必要なのは支える力です。地面反力や外部からの負荷を受け止め、姿勢を保てるだけの基礎的な強さがなければ、出力を高めようとするほどフォームは崩れ、ケガのリスクも高まります。

タイプ② 出力不足タイプ(パワー・スピード)

このタイプは、一見するとフィジカルが高そうに見えることが多いのが特徴です。筋トレの経験があり、ある程度の重さも扱える。しかし、実際のプレーになると球速や打球が思ったほど伸びない、動きが重たく見えるといった問題を抱えています。

起きやすい問題は、出力の立ち上がりが遅いことです。力は持っているものの、それを素早く発揮できないため、野球動作にうまくつながりません。結果として、「筋トレをしているのに速くならない」という状態に陥ります。

このタイプに不足しているのは、「力を素早く出す能力」です。ストレングスがあるからといって、自然にパワーやスピードが高まるわけではありません。野球では、短い時間で出力を立ち上げる能力が重要であり、この部分を意識的に鍛える必要があります。

タイプ③ ストレングス × 出力 両方不足タイプ

このタイプは、トレーニング経験が少なく、身体操作がまだ安定していない選手に多く見られます。動きがぎこちなく、基本的な動作でもバランスを崩しやすいのが特徴です。

起きやすい問題としては、技術練習が安定しないこと、ケガが多いことが挙げられます。フォーム以前に、身体を思い通りに動かすこと自体が難しいため、練習の質が上がりません。

このタイプの選手に必要なのは、部分的な強化ではなく、土台からの再構築です。ストレングスと出力のどちらかを先に伸ばそうとすると、必ず無理が生じます。まずは姿勢、安定性、基本的な動作パターンを整え、その上で段階的に強さと速さを積み上げていく必要があります。

この3タイプの考え方を理解することで、「なぜ結果が出ないのか」「なぜトレーニングが噛み合わないのか」が見えやすくなります。自分の課題を正しく捉えることが、適切なトレーニングを選ぶための第一歩になります。

学年・レベル別に見る「優先順位」

フィジカルは、年齢や競技レベルに関係なく重要な要素ですが、「いつ・何を優先して鍛えるか」は成長段階によって大きく変わります。ここを間違えると、努力しているにもかかわらず成果が出ない、あるいはケガが増えるといった問題が起こりやすくなります。フィジカルトレーニングは、常に同じことを続ければよいものではなく、成長段階に応じて目的と内容を変えていく必要があります。

小学生・中学生

この年代で最も重要なのは、身体の「土台づくり」です。ここでいう土台とは、筋肉量を増やすことではなく、正しい姿勢を保てること、安定した動作ができること、自分の身体をコントロールできることを指します。無理に重さを扱ったり、出力を求めたりする段階ではありません。

小学生・中学生は、身体がまだ成長途中にあります。この時期に過剰な負荷をかけると、動作が崩れたり、ケガにつながったりするリスクが高まります。そのため、重さや回数よりも「動きの質」を最優先に考える必要があります。ゆっくり動いても姿勢が崩れないか、左右差なく動けているかといった点が重要になります。

また、この段階で正しい身体の使い方を身につけておくことで、後の成長スピードが大きく変わります。土台が整っていないまま次の段階に進むと、後から修正するのに多くの時間がかかります。小学生・中学生のフィジカルトレーニングは、「将来のための準備期間」と捉えることが大切です。

高校生

高校生になると、身体の成長が進み、ストレングスを高める準備が整ってきます。この段階では、これまで作ってきた土台を維持しながら、少しずつストレングスを積み上げていくことが重要になります。ただし、ここでも急激な出力向上を狙う必要はありません。

高校生は、練習量や試合数が増えることで、身体への負担も大きくなります。そのため、単に強くなることだけを目的にするのではなく、「安定してプレーを続けられる身体」を作る視点が欠かせません。ストレングスを高める際も、姿勢やフォームを崩さずにコントロールできる範囲で行うことが基本になります。

この時期に無理な出力トレーニングを取り入れると、フォームの乱れや慢性的な不調につながることがあります。高校生の段階では、「強くなる準備を整える」「次の段階に進むための基礎を固める」ことが優先事項になります。

高校後半〜社会人

高校後半から社会人にかけては、ストレングスと出力の両方を高めていく段階に入ります。このレベルになると、単に力を持っているだけではなく、その力を野球動作に変換できるかどうかが重要になります。

ここで求められるのは、ストレングスで作った土台の上に、パワーやスピードといった要素を重ねていくことです。力を素早く出す能力、野球特有の動作に合わせて出力を調整する能力が、パフォーマンスの差を生みます。

ただし、この段階でも順番を無視してはいけません。ストレングスや安定性が不足したまま出力だけを高めようとすると、動作の再現性が下がり、ケガのリスクが高まります。「今、自分はどこを伸ばす時期なのか」を常に確認しながらトレーニングを進めることが、長く競技を続けるための鍵になります。

成長段階に応じた優先順位を理解することで、フィジカルトレーニングは無駄のないものになります。大切なのは、焦らず、段階を踏んで積み上げていくことです。

フィジカルを構成する「5つのカテゴリー」

フィジカルという言葉は非常に幅が広く、人によって捉え方が異なります。その結果、「何を鍛えているのか分からないままトレーニングをしている」という状況が生まれやすくなります。BTAでは、この曖昧さをなくすために、フィジカルを5つのカテゴリーに分けて整理しています。これはトレーニングメニューを分類するためではなく、「今どの能力が足りていないのか」を判断するための共通言語です。

ストレングス ― 力を受け止め、支える能力 ―

ストレングスとは、単に重いものを持ち上げる能力ではありません。野球におけるストレングスとは、地面からの反力や自分自身が生み出した出力を、姿勢を崩さずに受け止められる能力を指します。投球や打撃の動作中にフォームが崩れる場合、多くはこのストレングスが不足しています。

ストレングスが不足していると、力を出そうとするほど身体が不安定になり、結果として出力は上がりません。まずは支える力を整えることが、すべてのフィジカル強化の土台になります。

パワー/スピード ― 力を素早く出す能力 ―

パワーやスピードは、ストレングスとは別の能力です。十分な力を持っていても、それを素早く発揮できなければ、野球のプレーにはつながりません。球速や打球速度は、短い時間でどれだけ出力を立ち上げられるかによって決まります。

このカテゴリーが不足している選手は、動きが重たく見えたり、プレー全体にキレが出なかったりします。ストレングスを土台として、その力を「速く使う」能力を高めることが重要になります。

安定性(スタビリティ) ― 姿勢・バランスを保つ能力 ―

安定性とは、動作中に身体の軸を保つ能力です。どれだけ力があっても、姿勢が崩れればその力はロスしてしまいます。片脚での動作や、回旋動作が多い野球では、この安定性がパフォーマンスに大きく影響します。

安定性が不足すると、動作の再現性が低下し、調子の波が大きくなります。また、特定の部位に負担が集中しやすくなり、ケガのリスクも高まります。安定性は目立ちにくい要素ですが、競技力を支える重要な要素です。

モビリティ ― 必要な可動域を確保する能力 ―

モビリティとは、関節や筋肉が必要な範囲でスムーズに動く能力を指します。柔らかさそのものが目的ではなく、「野球動作に必要な可動域を確保できているか」が重要です。

モビリティが不足すると、正しいフォームを取ろうとしても身体が追いつかず、代償動作が生まれます。その結果、ストレングスやパワーが十分に発揮されなくなります。可動域は、他のすべてのカテゴリーの前提条件になります。

持久性・回復力 ― 繰り返しプレーできる能力 ―

野球は、一瞬の出力だけで終わる競技ではありません。試合や練習を通して、同じ動作を何度も繰り返す必要があります。そのため、出力を維持できる持久性や、疲労から回復する能力もフィジカルの重要な構成要素です。

この要素が不足していると、試合の後半でパフォーマンスが落ちたり、連戦で調子を崩したりします。持久性や回復力は、目に見える数値では測りにくいものの、長期的な競技生活を支える基盤になります。

これら5つのカテゴリーは、それぞれ独立しているようで、実際には密接に関係しています。どれか一つだけを鍛えても、野球のパフォーマンスは完成しません。重要なのは、「今の自分に足りないカテゴリーはどこか」を把握し、優先順位をつけて補っていくことです。この整理ができるようになると、トレーニングは格段に意味を持ち始めます。

自分の課題を知るための簡易チェック

フィジカルの課題を正確に把握するには、本来であれば専門的な評価や動作分析が必要になります。しかし、すべての選手が常にそうした環境を用意できるわけではありません。そこでここでは、専門機器を使わず、日常の中で自分の身体の状態を把握するための簡易チェックを紹介します。あくまで目安ではありますが、今の自分がどの要素に課題を抱えているのかを整理するきっかけになります。

チェック① 片脚立ちで安定できるか?

片脚で立ったとき、身体が大きく揺れたり、すぐにバランスを崩したりしないかを確認します。重要なのは、力を入れて耐えることではなく、自然な姿勢で安定していられるかどうかです。視線が定まらない、上半身が左右にぶれる、足先で無理に踏ん張るといった動きが出る場合、安定性が不足している可能性があります。

安定性が不足していると、投球や打撃といった片脚支持が多い野球動作において、出力が安定しません。力を出す以前に姿勢を保つことで精一杯になり、結果としてフォームが崩れやすくなります。片脚立ちのチェックは、スタビリティの状態を把握するためのシンプルで有効な方法です。

チェック② ゆっくりしゃがんでも姿勢が崩れないか?

次に、両脚でゆっくりしゃがむ動作を行います。このとき、背中が丸くなったり、膝が内側に入ったり、かかとが浮いたりしないかを確認してください。速さではなく、コントロールされた動作の中で姿勢を保てるかどうかがポイントになります。

このチェックで姿勢が崩れる場合、ストレングスやモビリティに課題がある可能性があります。特に、股関節や足首の可動域が不足していると、正しい姿勢を維持できません。また、体幹や下半身の支える力が不足している場合も、動作中にバランスを崩しやすくなります。しゃがむという基本動作は、野球動作の多くと共通する要素を含んでおり、フィジカルの土台を確認するうえで重要なチェックです。

チェック③ 軽いジャンプでも力強さを感じるか?

最後に、その場で軽くジャンプしてみてください。このとき、地面を押す感覚や、身体が軽く浮く感覚を得られるかを確認します。高く跳ぶ必要はありませんが、出力がスムーズに伝わっているかどうかがポイントです。

ジャンプ動作で力強さを感じられない場合、出力不足、特にパワーやスピードの要素が不足している可能性があります。力を持っていても、それを素早く発揮できなければ、ジャンプやスプリント、スイングといった動作につながりません。動きが重たく感じる選手は、このチェックで違和感を覚えることが多いです。

簡易チェックをどう活かすか

これらのチェックは、あくまで簡易的な指標です。できた・できないで優劣を決めるものではなく、「どこに課題がありそうか」を把握するための材料として使います。複数のチェックで引っかかる場合は、複合的な課題を抱えている可能性もあります。

重要なのは、チェック結果をもとにトレーニングの方向性を考えることです。安定性が不足しているのに出力系ばかりを行う、可動域が足りないのに重さを増やすといった取り組みは、遠回りになりやすくなります。まずは自分の状態を把握し、何を優先すべきかを整理すること。それがフィジカルトレーニングを意味のあるものに変える第一歩です。

「何をやるか」より「何をやらないか」

フィジカルの課題がある程度見えてくると、多くの選手が次に考えるのは「何をやればいいか」です。新しいトレーニング、効果がありそうなメニュー、強そうに見える種目に意識が向きがちになります。しかし実際には、フィジカルトレーニングにおいてより重要なのは、「今は何をやらないか」を決めることです。

課題を無視したトレーニングは、努力量が増えるほど遠回りになります。たとえば、明らかにストレングスが不足しているにもかかわらず、ジャンプやスプリントなどの出力系トレーニングばかりを行うケースがあります。この場合、身体は力を受け止めきれないため、動作は不安定になり、フォームが崩れやすくなります。結果として、パフォーマンスは伸びず、ケガのリスクだけが高まります。

逆に、出力が不足している選手が、支える系のトレーニングだけを延々と続けるケースもあります。ストレングスや安定性を高めることは重要ですが、それだけではプレーのスピードやキレは生まれません。必要な段階に進めていないにもかかわらず、「安全だから」「失敗しにくいから」という理由で同じ内容に留まり続けることも、成長を止める原因になります。

これらに共通しているのは、「順番を飛ばしている、もしくは順番を止めてしまっている状態」です。フィジカルトレーニングには、必ず優先順位があります。足りないものを、必要な順で補っていく。この原則を無視すると、どれだけトレーニングを積み重ねても、成果は限定的になります。

「やらないこと」を決めるというのは、サボることではありません。むしろ、自分の身体にとって今必要のない刺激を意図的に排除する、非常に能動的な判断です。すべてを同時に伸ばそうとするのではなく、今は一部に集中する。この選択ができるようになると、トレーニングの質は大きく向上します。

また、「やらないこと」を決めることは、ケガの予防という観点でも重要です。身体が準備できていない段階で強度の高い刺激を与えると、関節や筋に過剰な負担がかかります。これは成長を早めるどころか、競技生活そのものを短くしてしまう可能性があります。

フィジカルトレーニングは、「頑張った量」で評価されるものではありません。「今の自分に合った刺激を選べているかどうか」で評価されるべきものです。そのためには、課題を把握し、あえてやらない選択をする勇気が必要になります。この視点を持つことで、トレーニングは作業から戦略へと変わります。

第2章のまとめ

第2章では、フィジカルトレーニングを「頑張るもの」から「考えて取り組むもの」へと切り替えるための視点を整理してきました。最も重要なポイントは、フィジカルトレーニングがうまくいかない原因の多くは、努力不足ではなく「自分に何が足りないかを理解しないまま鍛えていること」にあるという点です。

全員に同じトレーニングを行うことは、一見すると平等に見えますが、フィジカルの観点では必ずしも合理的ではありません。身体の状態や成長段階が異なる選手が同じ刺激を受ければ、ある選手には不足し、別の選手には過剰になります。その結果、成長のスピードに差が生まれ、場合によってはケガや不調につながります。フィジカルは、本来個別に最適化されるべきものです。

BTAでは、フィジカルの課題を大きく3つのタイプに分けて考えます。
ストレングスが不足しているタイプ、力はあるが出力が足りないタイプ、そして土台から作り直す必要があるタイプ。それぞれで必要なアプローチは異なり、同じトレーニングを行う意味はありません。自分がどのタイプに近いのかを把握することで、トレーニングの方向性は大きく明確になります。

さらに、フィジカルの優先順位は学年や競技レベルによって変わります。小学生・中学生では土台づくりが最優先であり、高校生ではストレングスを積み上げる準備段階、高校後半から社会人では出力を含めた野球動作への変換が重要になります。この「時期」を間違えると、成長は遠回りになります。

フィジカルは、ストレングス、パワー/スピード、安定性、モビリティ、持久性・回復力という5つのカテゴリーで構成されています。どれか一つだけを鍛えても、野球のパフォーマンスは完成しません。だからこそ、「今の自分に足りないカテゴリーは何か」を整理することが欠かせません。

簡易チェックは、そのための入り口です。完璧な評価ではなくても、自分の身体を客観的に見る視点を持つことで、トレーニングは意味を持ち始めます。そして課題が見えたら、「何をやるか」以上に「何をやらないか」を決めることが重要になります。順番を守り、今必要のない刺激を排除することが、最短で安全な成長につながります。

第2章で伝えたかったのは、フィジカルトレーニングに正解のメニューはないということです。あるのは、「今の自分にとって適切かどうか」という基準だけです。この視点を持てたとき、トレーニングは作業ではなく、競技力を高めるための戦略になります。

次の章では、この考え方を踏まえたうえで、実際にフィジカルをどう積み上げていくのか、その順序と考え方をさらに具体的に掘り下げていきます。ここまで整理できていれば、トレーニングはもう迷いません。

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この記事を書いた人

BTAでは「#フィジカル勝負」というスローガンを掲げ、圧倒的なフィジカルを手に入れて野球パフォーマンスを向上させることを目指して、フィジカルトレーニングを提供しています。また、BTAでは野球パフォーマンスはスキル50%、フィジカル50%という考えを大切にしており、そのうちのフィジカル50%を徹底的に鍛えるためのメニューや環境をご提供することが私たちの役割だと信じています。

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