野球肩・野球肘を防ぐ|肩のインナーマッスル強化トレーニング【動画付き】

「投げると肩や肘が痛い」「最近ボールに力が乗らない」——投手なら一度は感じたことがあるかもしれません。野球肩・野球肘は、投げすぎや投げ方のクセ、体の硬さが積み重なって起こることが多く、放っておくと長く野球を続けられなくなることもあります。だからこそ、痛くなる前の「予防」がとても大切です。

この記事では、野球肩・野球肘を防ぐための考え方と、肩のインナーマッスル(ローテーターカフ)や肩甲骨まわりを鍛えるトレーニングを、BTAの動作解説動画つきで紹介します。バンド(チューブ)が一本あれば自宅でも球場でもできる種目ばかりなので、フォームを確認しながら安全に取り組めます。成長期の体に配慮したポイントもあわせて解説します。

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目次

野球肩・野球肘はなぜ起こる?主な原因を知ろう

投げすぎ(オーバーユース)が最大の要因

野球肩・野球肘のいちばん大きな原因は、投げすぎによる使いすぎ(オーバーユース)です。投球という動作は、肩や肘にとってかなり負担の大きい動きで、1球ごとに関節や腱に強いストレスがかかります。

このストレスは1球では問題なくても、回復が追いつかないほど投げ続けると、少しずつ組織にダメージが蓄積していきます。特に試合や練習が連続する時期は、知らないうちに限界を超えてしまいがちです。

たとえば、痛みがないからと毎日全力投球を続けたり、複数のチームをかけ持ちして投球数が把握できていなかったりすると、リスクは一気に高まります。投球数や登板間隔を記録し、休む日をきちんと作ることが、最も基本的な予防になります。

投げ方・フォームのクセ

同じ球数を投げても、肩や肘を痛める選手とそうでない選手がいます。その差を生む大きな要因のひとつが、投球フォームです。腕だけに頼った「手投げ」や、肘が下がったフォームは、肩・肘への負担を大きくします。

本来、投球は下半身で生んだ力を体幹から腕へと順番に伝える全身運動です。この連動がうまくいかず腕の力に頼ると、その分だけ肩と肘が余計に働かされ、障害につながりやすくなります。

フォームの乱れは、疲れてきたときにも起こります。後半に肘が下がる、体が早く開くといったクセは、疲労のサインでもあります。鏡や動画で自分のフォームを定期的に確認し、無理のない投げ方を身につけることが、予防の第一歩です。

姿勢・可動域の不足

肩甲骨や胸まわり、股関節が硬く、十分に動かせないと、その分の負担を肩や肘が肩代わりすることになります。体の一部の動きが足りない場所は、別の場所が無理をして補う——これが障害の隠れた原因です。

たとえば肩甲骨の動きが悪いと、腕を大きく振るために肩関節そのものへの負担が増えます。猫背などの悪い姿勢も、肩がうまく使えない原因になります。日頃のスマホやデスクワークの姿勢も、実は投球に影響しているのです。

だからこそ、筋力をつけるだけでなく、体をしなやかに動かせる可動域(モビリティ)を保つことが欠かせません。原因は「投げすぎ」「フォーム」「体の硬さ」が組み合わさって起こることが多く、予防もこの3つにまとめて取り組む必要があります。

肩を守るインナーマッスル(ローテーターカフ)の役割

ローテーターカフとは何か

肩のインナーマッスルは、正式にはローテーターカフ(回旋筋腱板)と呼ばれます。棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋という4つの小さな筋肉のことで、肩関節を深いところから包み込むように支えています。

肩関節は、体の中でもっとも大きく動く関節です。その分、構造としては不安定で、腕の骨が抜けやすい作りになっています。この不安定な関節を、ローテーターカフが「受け皿の中心」に保ち続けてくれているのです。

投球時には、肩は猛スピードで振られ、強い力で引っ張られます。このときローテーターカフがしっかり働いていないと、関節がブレて余計なストレスがかかり、痛みやケガにつながります。アウターの大きな筋肉だけでなく、この縁の下の力持ちを鍛えることが予防のカギです。

外旋・内旋トレーニングがなぜ重要か

ローテーターカフを鍛えるうえで中心になるのが、腕を外側にひねる「外旋」と、内側にひねる「内旋」の動きです。投球では特に外旋筋(棘下筋・小円筋)に大きな負担がかかるため、ここを重点的に鍛える必要があります。

投球動作では、振りかぶった腕を勢いよく前へ振り出します。このとき、肩が前に流れすぎないようブレーキをかけるのが外旋筋の役目です。ブレーキ役が弱いと、減速のたびに肩へ強い負担がかかってしまいます。

多くの選手は、ボールを押し出す内旋の力に比べて外旋の力が弱くなりがちです。このアンバランスが肩の障害につながるため、外旋トレで筋力のバランスを整えることが大切です。次の章で、バンドを使った具体的な種目を紹介します。

軽い負荷で「丁寧に効かせる」のが原則

インナーマッスルは小さな筋肉なので、重い負荷でゴリゴリ鍛える種目ではありません。バンドの弱めの抵抗や軽いダンベルで、フォームを保ちながら丁寧に行うのが基本です。負荷を上げすぎると、アウターの筋肉ばかり使ってしまいます。

目安は、15〜20回をなんとかこなせる程度の軽さで、2〜3セット。回数を追って雑に動かすより、効かせたい筋肉を意識してゆっくり動かすほうが効果的です。反動を使わず、関節を安定させながら行いましょう。

こうしたインナートレは、投球前のウォームアップや投球後のケアとしても取り入れられます。バンドが一本あれば球場でもできるので、チームのルーティンに組み込むのがおすすめです。地味な種目ですが、続けることが肩を守る一番の近道です。

肩のインナーマッスルを鍛えるバンドトレーニング【動画付き】

バンド エクスターナルローテーション

バンド エクスターナルローテーション(外旋)は、肩のインナーマッスルを鍛える主力種目です。投球時に肩のブレーキ役を担う外旋筋を直接強化でき、肩の安定性を高めて障害予防につながります。軽いバンドさえあれば自宅でも球場でも手軽にできます。

動画のように、脇をしめて肘を90度に曲げ、前腕だけを外側へ開いていきます。肘の位置がぶれないよう、脇にタオルをはさむと安定します。反動を使わず、15〜20回×2〜3セットを左右丁寧に行いましょう。

インターナル/エクスターナルローテーション

内旋・外旋をセットで行うこの種目は、肩を内・外の両方向からバランスよく鍛えられます。外旋だけでなく内旋筋(肩甲下筋)も整えることで、肩関節全体の安定性が高まり、投球での負担を分散できます。

外旋では腕を外側へ、内旋では内側へと、脇をしめたまま前腕をゆっくり動かします。スピードを出さず、効かせる筋肉を意識するのがコツです。それぞれ15回前後を2〜3セット、左右均等に行いましょう。

バンドスケアクロウ

バンドスケアクロウ(かかし)は、肩の後面と外旋筋を鍛える種目です。投球の減速局面で働く肩後ろ側の筋肉を強化でき、肩を守る力が高まります。名前の通り、かかしのような姿勢で行うのが特徴です。

両肘を肩の高さに上げ、前腕を後ろへ起こすように外旋します。肩がすくまないよう、肩を下げたまま動かすのがポイントです。負荷は軽めにして、12〜15回×2〜3セットを目安に丁寧に行いましょう。

これらのインナートレは、どれも「重さで追い込む」種目ではありません。軽い負荷で、効かせたい筋肉を意識しながら正確に動かすことが何より大切です。フォームが崩れるほど負荷を上げると、せっかくの効果が薄れてしまいます。

まずは外旋の主力種目から始め、慣れてきたら内旋・外旋やスケアクロウを加えて、肩を多方向から鍛えていきましょう。投球前のウォームアップや投球後のケアに組み込めば、毎日の習慣として無理なく続けられます。動画でフォームを確認しながら、一つひとつ丁寧に積み重ねることが、肩を守る確かな力になります。

肩甲骨まわりの安定(スキャプラコントロール)を高める

なぜ肩甲骨の安定が大切なのか

腕は肩甲骨を土台にして動いています。土台である肩甲骨がグラついていると、その上に乗る肩関節も不安定になり、ローテーターカフだけでは支えきれなくなります。これが肩・肘への負担を増やす原因になります。

肩甲骨を適切な位置に保ち、なめらかに動かす力を「スキャプラコントロール」と呼びます。ここで重要になるのが、僧帽筋下部や前鋸筋といった、肩甲骨を背中に引き寄せ・安定させる筋肉です。

これらの筋肉が弱いと、肩甲骨が外や上にずれて、いわゆる「肩がすくんだ」状態になりがちです。すると肩の中で骨同士がぶつかりやすくなり、痛みの原因になります。土台を整えることが、肩関節そのものを守ることにつながるのです。

プロン TYI’sレイズ

うつ伏せで腕をT・Y・Iの形に動かすこの種目は、肩甲骨を安定させる僧帽筋下部を中心に鍛えられます。肩甲骨を背中側に引き寄せる力が高まり、肩を守る土台づくりに役立ちます。器具なしの自重でできるのも魅力です。

うつ伏せになり、腕をT・Y・Iの各形に上げていきます。腕を上げるより「肩甲骨を寄せて下げる」意識を持つのがコツです。各形を10回前後、ゆっくり丁寧に2〜3セット行いましょう。

プロン ブラックバーン

プロン ブラックバーンは、うつ伏せで複数の腕の動きを連続して行い、肩甲骨まわりと肩後面をまとめて強化する種目です。肩を支える筋肉を総合的に鍛えられるため、投手のコンディショニングに広く使われています。

動画の一連の動きを、肩がすくまないように注意しながら順番に行います。最初は腕を上げる高さが低くても構いません。各動作を8〜10回ずつ、無理のない範囲で2セットを目安に取り組みましょう。

バンドプルアパート

バンドプルアパートは、バンドを左右に引き開く動きで、肩甲骨を寄せる筋肉(菱形筋・僧帽筋中部)を鍛える種目です。猫背の改善や姿勢づくりにも効果的で、肩を正しい位置に保つ習慣がつきます。立ったままどこでもできます。

バンドを胸の前で持ち、肩甲骨を寄せながら左右に引き開きます。肩がすくまないよう、胸を張って行うのがポイントです。15〜20回×2〜3セットを、姿勢を意識しながら丁寧に繰り返しましょう。

可動域(モビリティ)を保ち、肩・肘を守る

肩甲骨・胸郭・股関節の動きがカギ

投球は全身運動なので、肩だけが柔らかくても十分ではありません。肩甲骨・胸郭(胸まわり)・股関節という3つの大きな部位がしっかり動くことで、肩や肘への負担を全身に分散できます。

たとえば胸郭が硬くて体を十分にひねれないと、その不足を肩や肘の動きで無理に補うことになります。股関節が硬ければ、下半身で生んだ力をうまく使えず、やはり腕に頼った投げ方になりがちです。

つまり、離れた場所の硬さが肩・肘の障害につながるのです。日頃から3つの部位の可動域をチェックし、硬い部分を重点的にほぐすことが、結果的に肩と肘を守ることになります。筋トレと同じくらい、体を動かせる柔らかさを大切にしましょう。

バンド ディスロケーション

バンド ディスロケーションは、バンドを持った腕を頭の上から背中側へ大きく回し、肩の可動域を広げる種目です。投球で大きく腕を使うために必要な、肩まわりのしなやかさを養えます。ウォームアップにも最適です。

バンドを肩幅より広めに持ち、痛みのない範囲で腕を前から後ろへゆっくり回します。最初は無理に狭く持たず、できる幅から始めましょう。10回前後を2セット、反動を使わずに丁寧に行います。

ウォームアップとクールダウンを習慣に

どんなに良いトレーニングをしても、投げる前の準備と投げた後のケアを怠ると、肩・肘は守れません。ウォームアップで体を温めて可動域を広げ、クールダウンで疲れをためないことが、障害予防の基本習慣です。

練習前は、肩甲骨や股関節を動かすダイナミックなストレッチや、バンドの軽い外旋運動で肩を起こしておきましょう。冷えた状態でいきなり全力投球するのは、ケガの大きな原因になります。

投球後は、使った筋肉をゆっくり伸ばすストレッチで疲労を残さないようにします。この「準備とケア」を毎回のルーティンにできるかどうかが、長く投げ続けられる体をつくる分かれ道です。地味ですが、続ける価値は十分にあります。

可動域づくりは、一度やって終わりではなく、毎日少しずつ続けることで効果が積み上がります。練習がない日でも、お風呂上がりに肩甲骨や股関節を軽く動かすだけで、体の硬さは確実に変わっていきます。バンド ディスロケーションのような種目は、テレビを見ながらでも取り組めるので習慣にしやすいでしょう。柔らかくよく動く体は、肩・肘を守るだけでなく、投球そのもののパフォーマンスも引き上げてくれます。

成長期の選手が特に気をつけたいこと

痛みのサインを我慢しない

予防でいちばん大切なのは、痛みや違和感を我慢しないことです。「これくらい大丈夫」と投げ続けた結果、長期離脱につながるケースは少なくありません。痛みは、体が出している大事な警告サインです。

投げたあとに痛みが続く、特定の動きで痛む、力が入りにくい——こうしたサインがあれば、まずは投球を休む勇気を持ちましょう。早めに対処すれば軽くて済むことも、無理を重ねると重症化してしまいます。

痛みが引かない場合は、自己判断せず専門家に相談することが大切です。指導者や保護者も、「痛くても投げる」ことを評価するのではなく、「正直に痛みを伝えられる」環境をつくってあげてください。それが選手の未来を守ります。

投球数・登板間隔を管理する

成長期の体は、大人よりも障害のリスクが高い状態にあります。だからこそ、投球数や登板間隔の管理がとても重要です。1日の球数、連投の有無、休養日をきちんと決めて守ることが、オーバーユースを防ぎます。

特に複数チームをかけ持ちしている選手は、全体の投球数が見えにくくなりがちです。チームごとではなく、その子が「合計で何球投げているか」を大人が把握してあげることが欠かせません。

練習でも、調子が良いからと投げ込みすぎないよう注意が必要です。量より質を意識し、しっかり休む日を作る。この当たり前のことを徹底できるチームほど、選手が大きなケガなく成長していきます。

成長板への配慮を忘れない

中学生・高校生は、骨が伸びる成長期の真っ只中にいます。骨の端には成長板という柔らかい部分があり、ここは大人の骨に比べて衝撃やストレスに弱い状態です。投げすぎは、この成長板に負担をかけることがあります。

この時期に肩・肘へ強い負担を繰り返すと、将来に影響が残ることもあります。だからこそ、成長期こそ「鍛えること」と同じくらい「守ること」を優先する必要があるのです。インナーや可動域のケアは、その守りの中心です。

筋トレも、いきなり重い負荷を扱うのではなく、まずはバンドや自重で正しいフォームを身につけることが大切です。土台となる体ができてから、徐々に強度を上げていく。焦らず段階を踏むことが、長く野球を楽しむ秘訣です。

よくある質問

インナーマッスルのトレーニングは毎日やってもいいですか?

インナーマッスルのトレーニングは負荷が軽いため、比較的高い頻度で行いやすい種目です。ウォームアップやケアとして毎日少しずつ取り入れるのも良いでしょう。ただし、痛みや強い疲労があるときは無理をせず休みましょう。大切なのは回数より、フォームを保って丁寧に続けることです。

どんなバンド(チューブ)を選べばいいですか?

インナートレには、軽め〜中くらいの抵抗のバンドがおすすめです。強すぎるバンドだと、鍛えたい小さな筋肉ではなく大きな筋肉ばかり使ってしまいます。15〜20回を正しいフォームで行える強さが目安です。可動域づくりにも使えるので、1本持っておくと自宅でも球場でも幅広く活用できます。

痛みがあるときもトレーニングを続けていいですか?

痛みがあるときは、トレーニングも投球も一度止めることが基本です。痛みを我慢して続けると、症状が悪化するおそれがあります。まずは休んで様子を見て、痛みが引かない場合は専門家に相談しましょう。予防のトレーニングは、あくまで痛みのない健康な状態で行うものだと考えてください。

まとめ

野球肩・野球肘の予防のカギは、「投げすぎを管理する」「フォームを整える」「体の硬さをなくす」の3つに、肩を守る筋力づくりを組み合わせることです。ローテーターカフの外旋・内旋トレで肩を安定させ、肩甲骨まわりのトレーニングで土台を固め、肩甲骨・胸郭・股関節の可動域を保つ——この流れを意識して、毎日のルーティンに取り入れましょう。

今回紹介した種目は、バンドが一本あれば自宅でも球場でも取り組めるものばかりです。BTAのトレーニングメニュー閲覧アプリを使えば、動画でフォームを確認しながら一つひとつ正しく実践できます。成長期だからこそ、鍛えることと守ることを両立し、痛みのサインを我慢せず、長く元気に投げ続けられる体をつくっていきましょう。

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この記事を書いた人

BTAでは「#フィジカル勝負」というスローガンを掲げ、圧倒的なフィジカルを手に入れて野球パフォーマンスを向上させることを目指して、フィジカルトレーニングを提供しています。また、BTAでは野球パフォーマンスはスキル50%、フィジカル50%という考えを大切にしており、そのうちのフィジカル50%を徹底的に鍛えるためのメニューや環境をご提供することが私たちの役割だと信じています。

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